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コラムColumns曹貴裁体制3年目。成熟の湘南スタイル。

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曹貴裁体制3年目。成熟の湘南スタイル
2014-04-04 11:00 RSS

Jリーグで唯一の開幕5連勝。1年でのJ1復帰を目指す湘南は、開幕からすがすがしいまでのアグレッシブなサッカーを展開し、首位を快走している。曹貴裁監督が就任して3年目のシーズン。「継続と深化」をテーマに掲げる今季は、過去2年で根付いたスタイルをさらに突き詰め、毎試合の勝利にもこだわるという強い決意が見て取れる。一方で、まだ5試合を終えた段階ながら、ある変化の兆候も見え始めた。開幕前に指揮官が語った「変えてはいけない部分と変わらなければいけない部分」。その言葉の意味を知る手掛かりとなるデータを幾つか紹介していきたい。

まずは継続の部分から。上のグラフと下の2つの表は曹貴裁監督が指揮を執り始めた2012年から2014年までの成長の跡をたどったものだ。最も目を引くのはアタッキングサードでのタックル成功率だろう。指揮官の就任初年度から強烈だった高い位置でのボール狩りは、J1の舞台でも弱まるどころかさらに勢いを増し、J2を戦う今季は5節終了時点で93.3%の成功率を記録。回数でいえば、湘南は今季アタッキングサードで15回のタックルを試み、そのうち14回の成功を収めていることになる。1試合平均のタックル数、つまり成功率の分母となる数値も同時に上がっていることを踏まえると、驚異的な上昇率といっていい。

奪ったボールを前に運ぶ意識も、J1での経験を経て着実に強まっている。パスの前方比率は2012年の42.9%から44.3%と微増だが、5割以下だったパスのワンタッチ比率は一気に54.8%へと上昇。また、湘南の攻撃の特徴を補足するデータとして、選手のキープ時間を調べた。対象は、各シーズンで主力として出場したセンターバック、ボランチ、ウイングバックの選手。年度ごとに見ていくと、苦戦した2013年のJ1では、ボールを持つ時間が増えた選手が大半を占めている。J1チームとの力関係により、得意とするハイテンポなサッカーを実現できず、攻めあぐねていたことを示すデータの1つだ。それでも、戦いの場を再びJ2に移した今季は、ほとんどの選手が2012年からキープ時間が短縮。各年度で選手は入れ替わっているが、チームのビルドアップの特色は、中盤より後方に位置する選手のボールの扱い方に表れやすい。今季の各ポジションを担う選手たちの球離れの早さが、縦への推進力を増幅させていると見ていいだろう。

2013年は厳しい戦いが続いたものの、J1を勝ち抜くために何が足りないかを1つ1つ整理できたに違いない。特に再認識させられたのはゴールを決め切ることの重要性だろう。2012年にJ2トップの66得点(1試合平均1.6得点)を記録したチームは、2013年のJ1ではわずか34得点(1試合平均1.0得点)にとどまった。それが、今季はここまでJ2トップの13得点(1試合平均2.6得点)。昨季の課題を糧に、確かな前進を見せている。
と、言葉にするのは簡単だが、では実際にどのような変化があったのか。攻撃に関するデータをさらに掘り下げて見ていきたい。

上の表は、湘南のシュートまでに掛かった時間。6秒ごとに3分割した場合、速攻(0~6秒未満)からのシュート数が減少傾向にある一方で、遅攻(12秒以上)からのシュート数は増加している。上の項で述べた前への意識と速い攻撃が、シュート数と反比例の関係にあるようだ。ここから考えられるのは、カウンターから必ずしもシュートに持ち込まず、打つべきタイミングを見計らって打つようになってきているということか。確かにカウンターは最も効率良くゴールを奪う手段ではあるものの、失い方が悪いと「カウンター返し」から失点につながる危険をはらむ。カウンターを含めた攻撃の質の向上は、守備のリスク回避と同義だ。意図的に手を加えている部分なのかどうか、まだ5試合しか消化していないため断定はできないが、結果だけ見れば速攻と遅攻からのシュート成功率が上がり、失点数は現在リーグ最少。戦いの幅が広がったことで、武器であるカウンターは一段と鋭さを増している。

主力選手の流出や負傷離脱によって開幕前にメンバーの再編成を余儀なくされた湘南だが、始まってみればこれ以上ない最高の滑り出しを見せている。選手の入れ替わりがあったことで、連係面など今後のチームとしての伸びしろも十分。J1再挑戦を見据えた「継続と深化」のチーム作りは、順調に進んでいる。

2014-04-04 11:00 RSS
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