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この夏に起きた名古屋グランパスの「革命」を振り返る
2018.9.13

この夏、明治安田生命J1リーグで最も得点を奪ったチームが名古屋グランパスであることは想像に難しくないだろう。FIFAワールドカップによる中断前は最下位にいた名古屋は今夏に勝点を積み上げ続け、一桁順位にまで迫ろうとする勢いだ。好調の要因はこの夏だけで12ゴールを記録し、本領を発揮したジョーの存在が大きいが、当然ながらジョーがブレイクしただけではない。頼れる最前線にボールが渡るまでの過程において、名古屋にどのような変化が起きたのか紹介しよう。

名古屋グランパスの成績変化

中断期間の移籍

連勝街道を突き進んでいることで注目を浴びる名古屋だが、その前の中断期間中も活発な補強を行って話題となった。夏の移籍といえば、そのシーズンに出番を失っている選手が出場機会を求めて期限付き移籍をすることが多いが、名古屋に限らず今夏は主力クラスが他のチームへ完全移籍をするケースが目立った。その中でも名古屋は多くの実力者を獲得し、フロントも一体となって現状打破へ動いたことが分かる。そして彼らは見事にチームへ溶け込み、直近の試合のスタメンも新加入選手全員が名を連ねた。

シュート関連データと保持時の走行距離

得点数が増えた名古屋だが、シュート数の試合平均値を見ると約1本増えたのみ。しかし、その道筋には変化があり、シュートパターンで見るとスルーパス、ドリブル、こぼれ球からのシュート割合が増えている。セットプレーとショートパスに偏っていた状態から広がりを見せたと言ってもいいだろう。また、Football LABで紹介している4つのチームスタイルで見ると、4つ全てのシュート率が増加しているが、特にロングカウンターの値変化が大きい。もう1点、名古屋がボールを保持している時の走行距離を見ると、全体では下降しているものの、24km/h以上の走行距離は微増しており、その割合は3%に達しようとしている。以前のコラム「夏場における走行データの低下とその影響」にて、夏に走行距離が下がる傾向にあることを紹介したが、そういった環境の中で24km/h以上の走行距離が近い値を示しているのは1つの変化と言えよう。

裏を狙う動き1

ここからは相手の最終ラインの裏を狙った動きについて、2つのケースを紹介しよう。まず1つ目は名古屋がボールを奪ってからの5秒間という状況下でデータを検出した。その回数はワールドカップによる中断前後で減少したが、一方で裏を狙った選手にボールが入った割合は増加。選手のトップ3を見ると、ワールドカップ中断前の数値の多くはジョーによってカウントされていたが、裏を狙っても彼にボールが入らない状況が多かった。しかし、中断明けのデータではこの偏りがなくなり、前田直輝、ガブリエルシャビエル、ジョーの3人に分散。トップ3の選手のプレー率は若干落ちているが、シュートへつながるケースは上昇しており、そのスピードは中断前を上回っている。この数値はカウンター時におけるシュート率の上昇にも大きく影響しているだろう。

裏を狙う動き2

次に紹介するのは、攻撃に時間がかかったケース。名古屋の攻撃時間が30秒以上経過してからの裏を狙う動きを検出した。相手の守備の人数がそろっている状況下において、このようなオフザボールの動きは相手を崩す重要なアクションとなる。こちらのデータは平均回数、プレー率ともに上昇。回数の上昇は30秒以上の攻撃そのものが増えた影響もある。選手別の回数では、ボール奪取時と同様に前田がトップ。名古屋での初戦となる広島戦後に自身から裏を狙う意識の強さを感じさせるコメントを残していたが、その言葉の通りの動きが数値となって表れた(名古屋グランパス公式サイトの広島戦後のコメントより)。
若いながらも東京V、横浜FM、松本といった異なるスタイルのチームで経験を得た前田が、名古屋の攻撃に新しいスパイスを与えており、加入早々から攻撃に欠かせない選手となっている。

相手守備の変化

前線に動きが増えると、相手の守備陣も当然警戒することとなる。その証拠に相手の最終ラインの高さは中断前に比べて約2m下がった。最終ラインも夏場に下がる傾向にあるデータの1つだが、その下がり幅はJ1全チーム中2番目に大きく、標準以上のものだ。さらにもう1点、相手の守備側のデータ変化の1つとして、名古屋がハイプレスを受けた際にボールを失った割合が大きく下がり、ハイプレスの回避率が高まっている。名古屋の今夏の補強の大部分は中盤から後ろのポジションの選手となっており、この数値の改善はその成果と言えるだろう。

前方パスデータ

名古屋といえばボールポゼッションだが、図の赤いエリア(ピッチを6分割して相手ゴールから2番目と3番目のエリア)への前方パスの成功率は中断前後で上昇。特にワンタッチでのパス成功率の上昇が著しく、パスの面でも改善が見えた。しかし、同パス時の直近の相手選手のデータを見ると中断前に比べてその距離は開いている。これは名古屋に限らず他のチームも同様の傾向で、夏の試合はプレッシャーが緩くなり、奪いに行く守備よりも後ろに下がる守備が多いことを示している。今後、気温が下がって相手の守備の動きに変化が訪れた際にも同様の値を出すことができるか。名古屋の「革命」はいよいよ最終局面を迎える。

Football LAB
八反地 勇


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