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コラムColumnsメダルに届かなかった理由 ~ロンドン五輪『韓国戦レビュー』~。

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メダルに届かなかった理由 ~ロンドン五輪『韓国戦レビュー』~
2012-08-14 00:00 RSS

ロンドン五輪の男子サッカーは3位決定戦で韓国に0-2と敗れ、44年ぶりのメダル獲得は叶わなかった。この試合のレビューは各所で行なわれているが、当サイトでは「データ」の比較から展開したいと思う。

データの比較対象は、優勝候補のブラジルを破って金メダルに輝いたメキシコ戦を含む「過去5試合」と「韓国戦」とした。


韓国戦を観ていて、筆者はキックオフからどこか違和感を覚えた。それは韓国チームの戦い方にある。この戦い方は、日本を十二分に苦しめた要因であるとともに、今後に向けての日本の課題ともなり得るのではないかと考えた。


それは、韓国(あるいは今後の日本の対戦相手)が「空中戦と肉弾戦」を選んだことである。


ピッチ状態が悪かったことも考えればこの戦い方を選ぶこと自体に違和感を覚えないが、その理由の一つとして、韓国の前線に空中戦に強い選手がいなかったことが挙げられる。


過去5試合(1試合あたり)と比べると空中戦の回数は倍近い数値となっており、単純計算で1分半に1回行なわれていたことになる。日本の前線も空中戦で勝負するタイプではないため、それぞれ敵陣での勝率は低く、いわゆる「行ったり来たり」のボールが増えたわけだ。


日本はそこからの脱却を狙って細かいパス交換からアタッキングサードへの進入をうかがっていたが、韓国のもう一つの狙いが発生する。肉弾戦だ。


ファウルをもいとわない激しいプレスを連動して行い、日本に自由を与えない守備をしていた。


ここで問題となるのが、日本がそれに反応してしまったこと。例えば後ろにカバーリングがいる数的優位でありながらも、冷静さを欠いて不用意にファウルを与えるなど、ファウル数はこれまでの平均より約1.5倍に。また、その強烈なプレスを嫌ってロングボールが増えるなど、思うような攻撃ができなくなっていた。つまり、相手の術中にはまったのである。


それらによって縦パスやアタッキングサードへのパスの精度が落ち、ロングボールが多くなったことでサポートが遅れ、受けたとしてもパスコースが少ないために囲まれるという悪循環となった。


この要因には、普段の練習も大きく左右しているのではないかと考える。仮にポゼッションを志向してパス回しに多くの練習時間を費やしているのであれば、紅白戦を行えば相手もそれを志向してくるだろう。つまり、スペインのようなチームへの対処は可能だが、韓国のような戦い方に対するケアは十分でないことになる。もちろん、練習を視察していないため憶測となるが、少なくとも韓国戦でのロングボールや厳しいプレスに対する「慌てぶり」は見て取れた。


今大会で見せた堅い守備からのカウンター攻撃や、相手のマークを外すような流れるパスワークが長所であることは間違いない。あとは、韓国のようにその長所を消しにかかる戦術を跳ね返す力をつけられるかどうか。パスの量(CBPの累計)ではなく、質(パス1本あたりのCBP)にこだわってほしい。


Text by 杉崎 健

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