TEAM SELECT

コラムColumns川端暁彦氏がデータで解く、J1昇格プレーオフの行方。

HOME » 川端暁彦氏がデータで解く、J1昇格プレーオフの行方
川端暁彦氏がデータで解く、J1昇格プレーオフの行方
2013-12-05 19:00 RSS

たった一つの椅子を目指す戦い、J1昇格プレーオフ。12月8日の国立競技場で行われる決勝戦に勝ち残ったのは、J2リーグ戦で2年連続して3位となった京都と、同4位の徳島。京都が勝てば、2010年シーズン以来のJ1復帰。徳島が勝てば、初のJ1昇格となる。

 

さて、この2チームはどんなチームなのだろうか。今回はリーグ戦におけるデータを用いて、余計な先入観を取り払いつつ、決勝進出を果たした両雄について分析してみたい。

 

まずは京都がJ2リーグでNo.1の数字を示したのは、「タックル数」(平均25.6回)である。ここで言うタックルはボールを奪いに行くプレー全般を指すが、その数字が最も多い。またタックルライン(ボールを奪いにいった場所が自陣のゴールラインからどのくらい離れているか。つまりどのくらい高い位置からボールを奪いにいっているかを表すデータ)が非常に高く、DF、MF、FWいずれのポジションでもボールを奪いにいく位置がJ2全22クラブの中で最も高い。さらに言えば、インターセプト(パスカットなどのボール奪取)の数も平均3.9回とJ2随一。つまり、この紫色のクラブは「高い位置から積極果敢にボールを奪いにいくスタイル」だと言えるだろう。被シュート数が平均7.6本(1位)と少ないのも、これが奏功しているからだ。

 

一方の徳島は、平均シュート数9.3本は19位、チャンス構築率(攻撃がチャンスにまでいった確率)も6.9%で15位など、攻撃面で突出したデータはない。総得点56点(8位)、総失点51点(9位)、平均支配率50.4%(10位)といった数字も、至って普通である。だが、徳島が凡庸なチームでないことはデータをよく読むと見えてくる。タックル数は平均19.5回で21位と非常に少なく、タックルラインも全体に低めで、特にMFは19位(39.5m)とかなり低い。またドリブルは平均8.6回(22位)と極端に少なく、実はパス数が平均476.9本(5位)と多め。支配率が普通であること、シュート数も少ないというデータと合わせて考えると、「中盤を低い位置に構えて相手を誘い込み、奪ったボールは意外につないで渡さない」というしたたかなチーム像が見え隠れしてくる。実は、徳島が関わる試合はアクチュアルプレーイングタイム(ゴールキックなどで試合が中断していない、実際にボールが動いている時間)が55分37秒と全体の3位。「お互いに結構ボールを持ち合って、にらみ合う展開の試合」に持ち込むのが非常に巧みなチームということだろう。

 

京都はボールを保持するタイプのチーム(平均支配率はG大阪に次ぐ2位だ)でありながら、アクチュアルプレーイングタイムが52分52秒と短い(11位)。前述のタックル数に加えて、ドリブルの多さ(平均16.0回で1位)からも分かるように、攻守でトライの多いチームだからこそ、この数字となる。つまり、タックルが少なくてドリブルも少なく、ボール支配率が平均的なのにもかかわらず、アクチュアルプレーイングタイムが長い徳島とは、まさに好対照のチームなのだ。

 

今季2度の対戦は徳島の1勝1分となっているが、実力的な差はほとんどないだろう。両者の特徴を思えば、京都がボールを持ち、徳島が誘い込む展開となるのはほぼ確実。ポイントになるのは、徳島が奪ったボールをつなごうとするときに、京都が高い位置で奪い返せるかどうかだろう。また、このゲームには準決勝同様に「引き分けならリーグ上位の京都が勝ち抜け」というルールがある。0-0で進行した場合、徳島はどこかでイチかバチかの賭けに出るしかない。そこが勝負のタイミング、そして試合のクライマックスになるだろう。

 

もしかすると、序盤は退屈な展開になるかもしれない。ただ、それはいわばクライマックスに向けた伏線だ。両将の胸の内を想像しながら、どこかで何を仕掛け、どう応じてくるのか。そんな展開を予想しながら観ていくのも、また楽しいかもしれない。

 

12月8日、国立競技場。「日本一残酷な、歓喜の一戦」。そのファイナルが、始まる。

 


関連リンク


京都の2013年のシーズンサマリー
http://www.football-lab.jp/kyot/

徳島の2013年のシーズンサマリー
http://www.football-lab.jp/toku/

2013-12-05 19:00 RSS
J STATS

Columns

Graphics