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2-0は本当に『危険なスコア』か?
2019.10.4

サッカーでは「2-0は危険なスコア」と言われることがある。2-0からの逆転劇で記憶に新しいのは「ロストフの悲劇」である。2018 FIFAワールドカップ ロシア大会 日本 vs ベルギーにおいて、2点先取した日本は後半に3失点し、逆転負けを喫した。このような例もあり、たしかに2点差は安心できない状況にも思えてしまう。

今回は「2-0は危険なスコア」とされている理由に迫りたい。まず始めに、明治安田生命Jリーグにおいて2-0が危険なスコアであるか確認する。その後、より詳細な調査を行い、「2-0危険説」を生んだ要因を少しでも明らかにしたい。

まずは、明治安田生命J1リーグ戦、J2リーグ戦、およびJ3リーグ戦の過去4年間のデータを利用し、2-0の状況が生まれた試合について考察する。全3,871試合のうち、2-0の状態が生まれた試合は1,337試合あった。つまり、全体の約1/3の試合で2-0の状況が生まれていることになる。その1,337試合において2点を先取したチームの試合結果は以下の通りだ。

2点を先取したチームは9割以上の確率で勝利を手にしており、敗北する確率は3%しかないため、2-0は圧倒的に優位な状況であると言える。

さらに詳しく2-0という状況について見ていこう。下図は、1-0でリードしているチームが2点目を取り2-0となった時間を示している。相手チームが疲弊する、または攻勢に出ると思われる試合終盤に2点目を追加するケースよりも、後半開始直後に2点目が入るケースが多い。

また、図2は1点目から2点目が入るまでに経過した時間を示している。先制点が入ってからおよそ15分後までに2点目が決まる試合が多いため、リードしているチームが一気に畳みかける試合が多いようだ。

上記の通り、2-0はリードしているチームにとって圧倒的に優位な状況である。しかし、1点返された場合、つまり2-1はどれほど危険な状況なのだろう?もし「2-0から2-1になった状況」の危険度が高いのであれば、「2-0危険説」にある程度の根拠を持たせることができる。ここでは、同じ1点リードの状況である1-0と比較してみよう。

「リードしているチームが同点に追いつかれた試合」がどれだけあったのか調査を行い、図3に示した。例えば、図3の赤色の線の左端に注目してほしい。これを見ると、「後半0~5分に2-1(厳密に言えば、1-0→2-0→2-1という得点経過で発生した2-1)の状態を保っていた試合のうち、それ以降の時間帯に同点に追いつかれた試合の割合は約50%」であることがわかる。

後半15分以降に同点に追いつかれる確率については、1-0と2-1の状態にほとんど差はない。しかし、後半15分までの時間帯においてはその差が目立つ。トータルで考えると、「1-0の状況」より、「2-0から2-1に追い上げられている状況」の方が、その後に同点にされる可能性が高い。

反対に、各状況から追加点を挙げてリードを拡げる場合について考えてみよう。図4は「リードしているチームが得点してリードを更に1点拡げた試合の割合」を示している。どの時間帯においても、1-0(橙色の破線)より2-0→2-1(赤色の線)の方が、追加点が決まった試合の割合が低い。すなわち、1-0よりも2-1の方が、追加点が決まり難い状況である。

まとめると、2-0→2-1の状況は1-0の状況に比べて同点に追いつかれる可能性が高く、かつ追加点が決まる可能性も低いため、より危険な状態であると言える。

もちろん、冒頭の調査の通り、2-0という状況自体は危険とは言えない。図3・4の青色のドット線が示すように、2-0の状態は同点に追いつかれにくく、かつ追加点が入りやすいため、非常に安定した状態である。しかし、そこから1点返された2-1は一転して不安定な状態になる。この1-0→2-0→2-1という得点経過の中で生じる「危険度のギャップ」が、2-0が危険とされる理由の一つかもしれない。

「2-0危険説」を生む要因として他に考えられるのは、認知バイアスである。認知バイアスとは、簡単に表現すれば「思考の偏り」のことだ。人間の脳は、客観的な情報よりは印象的な出来事をより強く記憶する傾向にある。今回の調査が示す通り、2-0から敗北する確率は3%しかない。しかしながら、2-0から敗北した試合はその意外性によって強烈に記憶に残りやすいため、どうしても「2-0は危険なスコア」と考えてしまう傾向にある。日本代表サポーター全員が悔し涙に暮れた「ロストフの悲劇」がその最たる例ではないだろうか。

今回の調査はJリーグ全体の傾向に着目したものであるため、個々の試合について考える際に「2-0は安全」または「2-1に追い上げられたら危険」と一辺倒に言えるわけではない。両チームの戦力差、試合の流れ、選手のコンディションなど、2-0の状況を生んでいる要因は試合によって大きく異なるからだ。しかし、観戦している試合のスコアが2-0になったときは、ぜひ「2-1の危険度」と「認知バイアス」について思い出してみて欲しい。本記事がサッカーをより深く考えるきっかけになると幸いである。

小栗 直己

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