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Jリーグのデータから作るゴール期待値
2020.1.23

Football LABでは、「ゴール期待値(Expected Goals)」という選手・チームを評価する指標を新たに掲載します。本記事では、ゴール期待値の概要および分析への応用についてご紹介します。


●ゴール期待値とは

ゴール期待値とは、「あるシュートチャンスが得点に結びつく確率」を0~1の範囲で表した指標であり、欧州を中心にサッカー界で活用され始めています。ゴール期待値はシュートの成功確率を表すので、値が高いほど得点が決まる可能性が高いシュートになります。

ゴール期待値について理解するため、2019 明治安田生命J1リーグ第3節における横浜FMのゴールシーンを見てみましょう。図1の通り、右サイド深い位置からのクロスをエジガルジュニオが触り、直後にマルコスジュニオールがゴールを決めています。このシュートに対してゴール期待値を算出してみると、0.285となりました。これは、おおよそ28.5%の確率でゴールが決まることが期待されるシュートであったことを意味します。

図1. 2019 明治安田生命J1リーグ 第3節 横浜FM vs 川崎Fにおける横浜FMの1点目

●AIによるゴール期待値の算出

今回、ゴール期待値の算出は勾配ブースティング決定木(GBDT)という機械学習の手法を用いて行いました。機械学習とは人工知能の一分野であり、「コンピュータがデータの特徴を学習し、自らタスクを実行すること」を指します。

今回、Football LABが保有する過去複数年のプレーデータおよびトラッキングデータをAIに学習させ、2019明治安田生命J1リーグの全シュートに対して期待値を算出しました。AIは過去のシュートに関する情報とシュート結果の関係性を学ぶことで、未知のシュートデータに対してシュート結果の予測ができるようになります(図2)。
 

図2. ゴール期待値の算出にAIが使用するシュート情報

2019シーズンのシュート位置およびゴール期待値を図3に示しました。競技の性質上、ゴールに近い場所ほどゴール期待値が高くなる傾向にあります。しかし、図を見ると同じような位置であっても期待値にはバラツキがあることに気づくと思います。これは、AIがシュート毎に様々な情報を考慮して期待値の算出を行っているためです。

図3. 2019 J1リーグにおけるシュート位置およびゴール期待値(アタッキングサードのみ)

●チーム・選手の潜在的なパフォーマンスを予測する

サッカーは運の影響を大きく受けるスポーツであるため、チーム・選手に対する適切な評価が難しいことが課題です。得点数に代表される従来の指標は“結果”のみが数字に反映されるため、「特定の場面において得点を得るべきだったのか」については何も語りません。そのため、“結果”として現れなかったシーンについて適切な評価を行うことが難しい状況でした。今回開発したAIはシュート1本1本に対する成功確率を予測するため、チーム・選手に対してより詳細な評価を行うことができます。

例として、簡単なチーム分析を行ってみましょう。シーズン中にチームが得た全てのゴール期待値を合計すると“期待ゴール数”となるため、これを見ればチームがどれだけ質の高い決定機を作り出していたかがわかります。さらに、期待ゴール数を実際のゴール数と比較することにより、チームのシュート能力を推測することもできます。各シュートに対して算出されたゴール期待値は、平均的な選手がシュートを打った場合のシュート成功確率に近いと仮定できます。つまり、合計ゴール期待値と合計ゴール数の差は、平均的なチームとのシュート能力の差を反映していると考えられます。

それでは、2019シーズン上位4チームの合計ゴール期待値と合計ゴール数を比較してみましょう(図4)。合計ゴール期待値は優勝チームである横浜FMが最も高くなっています。横浜FMの合計ゴール期待値はリーグ平均の約1.4倍の値を示しており、質の高い決定機をつくり出していたことが分かりました。また、上位4チームは期待値を上回るゴール数を記録しており、平均以上のシュート能力を発揮していたと考えられます。
 

図4. 2019 J1リーグ上位4チームの合計ゴール期待値および合計ゴール数

続いて、試合に対する分析例を紹介しましょう。第34節 横浜F・マリノス対FC東京におけるゴール期待値の合計は0.56-1.36となっており、FC東京の方が高い値を示していました(図3)。しかし、実際は横浜FMが3点差で勝利しています。図3の黒枠で囲んだゴール位置が示すとおり、横浜FMは成功確率が低いシュートチャンスをゴールに結びつけ、優勝を決めたことが分かります。

図5. J1リーグ 第34節 横浜FMvsFC東京における横浜FMのシュート位置の分布。ゴールとなったシュートの位置を黒枠で囲っ

今回紹介したように、ゴール期待値を使用することにより、シュートに対する定量的な評価が可能になります。今後はゴール期待値を使い、様々な分析を行っていく予定です。

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