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堅守栃木、ギリギリ残留の昨季との違いは?
2020.10.2

 昨季、最後の最後に奇跡のJ2残留をつかみ取った栃木が、今季は躍動している。23節終了時での順位は8位。今季の強さを裏付ける要因は何なのか。これまで集積されたデータ(22節終了時点)をもとに、その真相をひも解いていく。

 まず特筆すべきは守備の堅さだろう。ここまで23試合を消化し、その中で喫した21失点は、リーグで3番目に少ない数値だ。最少失点のチームは現在1位、昨季3位の徳島であることを考えると、昨季は降格の危機にあった栃木がこの成績を残していることは、健闘と称してよいだろう。では、堅守を支える要因は何なのか。


 低迷した昨季と比較したとき、最も顕著なのはボールを奪う位置だ。ボール奪取の平均ラインが昨季に比べて6メートルほど前進したことに加え、敵陣でのボール奪取回数もリーグでトップ。まさに「前から積極的に奪う守備」にシフトチェンジしたことが、今季の栃木の特徴として挙げられる。それを象徴するプレーヤーが、ユースから大学を経て今季に復帰した「俊英」明本考浩だ。前線から激しいプレスを掛け続けて相手からビルドアップの余裕を奪い、時には高い位置で自ら奪ってショートカウンターにつなげる。実際に、ボール奪取から10秒以内でのチームのシュート数はリーグ4位、ボール奪取からのシュート数に占めるそうしたシュートの割合がリーグ2位と、その貢献度は如実に表れている。

 また、ハイプレスをかいくぐられても鉄壁の守備は崩れない。まず、被ペナルティエリア進入回数が4番目に少ない。これは第一ラインを突破された後の守備対応によく表れている。素早いプレスバックでまずボールホルダーの自由を制限し、他の味方は中央のパスコースを素早く封鎖して縦パスを入れづらい状況を生み出す。一方でサイドにはある程度の余裕を与えており、被クロスの回数もやや多いが、このやり方は「サイドに意図的に追いやる」という見方の方が賢明だ。被クロス後の空中戦勝率は最も高く、クロスを入れさせるのは彼らにとって最も「守りやすい」形であるためだ。特にその貢献度が高いのが、不動の主力センターバックとして構える田代雅也。自陣での空中戦勝率が3番目に高く、「はね返し戦術」には欠かせないピースとなっている。

 では、攻撃面ではどうか。23節終了時点の得点数は22であるが、これはワースト4位。この数値は決して満足できる数値ではないだろう。ここからは、現状の主だった攻撃スタイルと、その課題について論じていく。


 現在メインとしている攻撃スタイルは大きく分けて2パターンあり、「高い位置でのボール奪取からのショートカウンター」と「サイドからのクロス攻撃」だ。前者については前からの守備対応の一環として言及したため、ここでは割愛する。後者において、キーマンは瀬川和樹と矢野貴章だ。まず、左サイドバックの瀬川は3位のクロス回数を誇り、成功率も高い。強靭な肉体を生かした「猪突猛進」の突破と左足からの高速クロスを武器に、サイド攻撃のキーマンとなっている。また、右サイドバックの溝渕雄志と同様に、弾丸のような威力のロングスローも大きな持ち味だ(チームとして、ロングスロー数は1位)。そして、それに合わせるのが長身FWの矢野だ。矢野は出場時間がそれほど多くないものの、敵陣での空中戦数はリーグトップ。勝率も高く、ターゲットとしての強さを如実に示している。いずれにおいても共通するのは、自分たちでじっくりと組み立てて攻め入るのではなく、機を見てそこに「集中」してチャンスへとつなげる姿勢だ。このことは、平均ボール支配率38.6%、平均ボール保持時間18分47秒が、ともにリーグ最低の数値であるというデータからも裏付けられよう。

 一方で、課題として感じられるのはシュート決定率の低さだ。PKを除いたシュート数280本は9位と少なくない数値なのに対し、決定率6.4%はワースト2位の成績であり、決して満足できるものではない。個人に着目すると、先発出場の多い明本、大島康樹はシュート決定率(PK除く)がそれぞれ5.9%、5.0%とこちらも十分な結果にはつながっていない。アディショナルタイムに抜群の決定力を発揮し、合計6もの勝点をもたらした柳育崇のような「最後のヒーロー」に頼らずとも、流れの中から決め切れる決定力を身に付け、より簡単に勝ち切れるようになりたい。


 また、セットプレーからの得点数の少なさも気がかり。敵陣でのFKとCKの獲得数はリーグで4番目に多いのに対し、そこから5プレー以内の得点数が22節で挙げた柳の1点のみと大きな課題を抱えている。矢野、田代、高杉亮太など空中戦に強いターゲットはしっかりとそろっているだけに、プレースキックの精度や連係を高めてチャンスとなり得る場面をより多く増やしたい。

 異例のレギュレーションによって長らくリーグが中断した中、シーズンは早くも折り返し地点を過ぎた。組織的で強固な守備を武器にここまで躍動してきたが、一方で攻撃力不足という課題も抱えてきた。チームとしての総合力がモノを言う後半戦は、ここまで培ってきた堅守を維持しつつ、フィニッシュの精度を高めてしたたかに勝点を積み上げたい。後半戦も勢いをそのままに失速することなく、J2での9位という過去最高成績(2013年に達成)を塗り替える結末に期待したい。


執筆:荒井 秀斗


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