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コラムColumns「新潟の至宝」本間至恩 進化の過程を分析。

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「新潟の至宝」本間至恩 進化の過程を分析
2020-10-09 18:00 RSS

 ミレニアムブームが沸き起こった「2000年」から早くも20年が経過し、Jリーグにおいてもこれ以降に生まれた若き選手が台頭し始めている。その中でも今回は、新潟の「新10番」として活躍する本間至恩にスポットライトを当て、彼の進化の過程をデータから読み解いていく。

 まずは、「00年以降生まれの選手」に絞って今季のリーグ戦のゴール+アシストのランキングを確認すると、本間は上位に位置していることが分かる。
00年以降生まれのJリーガーに限れば、今季の本間はトップクラスの結果を残しているプレーヤーの1人だ。J3のG大23やC大23といったチームはアカデミー所属中の選手も多く出場することを考慮すれば、J2クラブで主力として活躍している本間はより際立った存在である。
アカデミー所属時代の17年にルヴァンカップでデビューを果たし、18年のJリーグデビュー戦ではいきなりゴールを挙げたほか、幾度も切れ味鋭いドリブルを披露したこともあり、以降サポーターの大きな期待を背負ってきた本間。19年は主にジョーカーとして起用され、シーズン終盤になってようやくスタメンを確保しつつある状況だった。ところが、今季は序盤から定位置を確保。過密日程の中で14試合に先発出場(24節時点)、累計出場時間も昨季を上回り、すでに「チームの中心」として攻撃陣をけん引する役割を担っている。
そして、彼が中心選手として活躍しているという証しは、単に出場時間が増大したことだけでなく、プレーデータにも如実に表れ始めている。

・ドリブラー本間

本間の最大の持ち味といえば、何といっても希代のドリブルセンスであろう。スピードとテクニックを生かしてボールを持つたびに仕掛け、相手守備陣を悩ませる選手として幾度もチームに貢献してきた。今季もその武器が健在であることはJ2のドリブル数ランキングで全選手中堂々の1位という点からも改めて確認できる。
  今の本間を「期待の若手ドリブラー」と呼ぶことは、もはや失礼に当たる。「J2屈指のドリブラー」という呼び名のほうが適切だろう。

・プレーエリアの広がり

 昨季と今季のプレーエリア(プレーの割合)の図を比較すると、今季は中央や右サイドでのプレーが昨季と比べて増加していることが見て取れる。
 昨季は終盤に出場し、左からドリブルを仕掛け続けるプレーが繰り返し見られたが、今季はその「左サイド」という最大の強みを残しつつ、よりピッチ全体にプレー幅を広げている。もちろん、フォーメーションなどのチーム事情も関係しているが、本間としても「プレーの幅」を文字通り広げていることは間違いない。また、ラストパスやアシストの数も大きく増加しており(後述の「年度比較」図参照)、味方のシュートや得点に直接関わる、攻撃のキープレーヤーとしてピッチで大きな存在感を示していることはデータからも明らかだ。

・シュートの意識

 もう1つ、今季の本間至恩の特徴は「ミドルシュートへの意識」である。まずは、今季本間が挙げた得点を振り返ろう。
下図は今季のゴール時のシュート位置を示したものである。

 5得点のうち、月間ベストゴールを受賞した得点を含む3得点がPA外からのミドルシュートで挙げたゴールであるが、これこそが今季の本間の特筆すべき進化である。



 PA外からのシュート数を昨季と比較すると、90分平均でほぼ倍増していることが分かる。昨季は途中出場が多く、試合終盤に攻撃的に仕掛けることが求められる起用方法であったが、今季はスタートからの出場が主で、常に攻撃的なプレーのみ行っていればいいわけではない。そういった事情を考慮すれば、攻撃面の数字でこれだけ顕著に増加していることがどれほど大きな変化かというのは実感できるはずだ。

 また、単に昨季よりもシュートの意識を強く持っているだけでなく、今季のPA外シュートの枠内率ランキングではドリブルランクと同様にJ2全体で堂々の1位を記録している。
つまり、今季の本間はより積極的にシュートを放つ意識を強く持っているだけでなく、技術も伴ってより進化したプレーを披露していることが分かる。このランキングで本間の下に位置する選手たちが「シュートの名手」として名の知れた面々ばかりであることも、本間のシュート精度の高さを物語っているだろう。

 もちろん、シュートに関しては今季急激に成長したわけではなく、これまでも鋭いシュートは幾度もピッチで披露してきたが、今季は特にPA外シュートにおいて「数字」として顕著に表れ始めたと言えよう。もともと狭いエリアでのプレーを得意としているだけに、加えてPA外からも得点を奪える場面が増えれば、選手としてもう1段上のレベルに到達できることは間違いない。これまでの「高いテクニックで相手を翻弄してチャンスを作るドリブラー」という選手像から、「局面打開もできれば、一発で得点も狙える強力なアタッカー」へと変貌を遂げているのだ。


 期待の若手から、一皮むけてチームの中心選手となりつつある、アルビレックスの「新10番」。得点に関わる場面が増え、相手にさらなる脅威を与えられる選手へと進化を続けている。要注意選手として厳しいマークを受けるようになった中(昨季よりも被タックル数が増加)、まさに彼の真価が問われている時期に差し掛かっている。

 次節は明治安田生命J2リーグ第25節、京都vs新潟(10月10日 14:00K.O@サンガS)、次々節は明治安田生命J2リーグ第26節、新潟vs福岡(10月14日 19:00K.O@デンカS)と、チームにとって昇格争いの生き残りを賭けた大一番を立て続けに迎える。彼の活躍を期待するとともに、着実に成長を続ける「新潟の至宝」から今後も目が離せない。

執筆:増田 椋斗


・関連ページ
フットボールラボ 本間至恩 選手ページ
https://www.football-lab.jp/player/1610939/

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