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コラムColumnsクラブ新記録の12連勝。連勝前のアビスパ福岡とは、何が違う?。

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クラブ新記録の12連勝。連勝前のアビスパ福岡とは、何が違う?
2020-10-24 09:00 RSS

DataStadium アナリストに訊く

DataStadiumアナリストに訊く vol.7

「DataStadiumアナリストに訊く」では、アナリストを交えたインタビュー形式のコラムで、サッカーの面白さや新たな気付き・視点を与えられるような連載を目指します。

今回はデータスタジアムのアナリスト、高橋 朋孝 さんに訊いてみました。

——今回はJ2で12連勝を達成し、一気に首位まで上り詰めたアビスパ福岡を取り上げたいと思います。おそらく夏の段階ではアビスパサポーターですら、ここまでの快進撃は想像できていなかったのではないでしょうか。



[高橋] 9月2日の16節終了時点では17位に沈んでいたことを考えれば、この急浮上は多くの人にとってサプライズだったかもしれません。かく言う私も予想はできていませんでした。福岡は9月5日に行われた山口戦から10月18日の群馬戦まで、12連勝というクラブ新記録を達成するわけですが、連勝前と連勝中でどんな変化があったのか。今回は、こちらをテーマに掘り下げてみようと思います。


——では、はじめに福岡のストロングポイントについて教えてください。


[高橋] まず、守備の良さですね。 こちらは、成績が芳しくない連勝前の時期も悪くはありませんでした。ただ、連勝中はより良さが目立っている印象で、連勝中の12試合で4失点という守備の堅さは特筆すべきです。特に、縦軸がしっかりしている。センターバックのレギュラーである上島 拓巳ドウグラス グローリは自陣の空中戦で高い勝率を誇っています。特に上島選手は連勝期間中に限れば、85.7%と素晴らしい成績です。その後のルーズボール回収にもつながりますし、センターバックがボールをはね返す力があるというのは重要ですね。


——縦軸といえば、ボランチの前 寛之の存在感も見逃せないポイントになりますね。


[高橋] そうですね。福岡のボールゲイン数を連勝前の期間(開幕~9/2の千葉戦)と連勝期間で比較すると、増加をしています。特にミドルサードでのボールゲイン数(1試合平均)が22.4回から28.2回(リーグ14位→4位)に増えています。このデータには欠場が続いていた前選手が戦列に復帰したことが少なからず影響を与えているように思います。

アビスパ福岡の主将。前寛之

——少し脇道にそれますが、前選手の良さを紹介してもらえますか?


[高橋] まずは守備範囲の広さですね。スライドが速いですし、ルーズボールも拾える。自らプレスを掛けてボールを奪い切る奪取力もあります。また、守備だけでなく、攻撃でボールを引き出すのも上手ですね。起点になってスパッと縦パスを入れることもできる。攻守のバランサーとして、ここまでは守備面での良さが目立っているかもしれないですが、前所属の水戸では、ペナルティエリアに進入してアシストをしたり点を取ったり、ゴールに直結するプレーも見せていました。27節の群馬戦で今季初ゴールを記録しましたが、まさにあの得点のように、今後は攻撃面での良さも際立ってくるかもしれません。


——今後の活躍にも期待したいですね。では、チームの話に戻ります。縦軸の安定感がストロングポイントであり、守備の堅さを生んでいるという話でした。


[高橋] ただ、実は被シュート数を見ると連勝前の期間は1試合平均9.9本、連勝中の期間は11.2本となっており、相手に打たれるシュート数が大きく減ったということはないんです。被シュートの枠内率や被ペナルティエリア進入数などにも大きな変化はありません。それなのに、勝ち切れるようになった。


——面白いですね。ということは、何が結果に大きく結びついているのでしょうか?


[高橋] まず、当然ですが得点数が増えたことでしょう。先制することができれば、守備は相変わらず堅いわけですから、自分たちの形に持っていけるという自信が生まれますよね。相手にボールを支配されても、動じない強さや余裕が今はあるのかもしれません。指揮を執る長谷部 茂利監督はチームの「一体感」を大事にされる方で、チームをまとめるのが上手です。チームの雰囲気はすごく良い状態だろうと想像できますね。

ただ、連勝前後で1試合平均のシュート数には特に変化はないんです。というわけで、チームスタイルとして連勝前後でどこに変化があったのかを見てみます。

アビスパ福岡のチームスタイルを連勝前と連勝中で比較

福岡のチームスタイルとしてショートカウンター、ロングカウンターというのは連勝前から継続した武器といえますが、データとして明らかな変化があったのが、右サイドからの攻撃です。1試合平均での右サイド攻撃の数が、連勝前はリーグ18位の値だったのですが、連勝期間ではリーグ1位となっています。



——右サイドでは増山 朝陽エミル サロモンソンのコンビが存在感を発揮していますね。


[高橋] 連勝期間中の選手別のペナルティエリア進入数を見ると、サイドハーフの選手たちの進入数が増えています。石津 大介選手や福満 隆貴選手の回数も増えていますが、トップはその増山選手でした。右サイドのコンビが存在感を高めていることが、得点の増加につながったといえるかもしれません。

10月21日(水)の町田戦で12連勝が止まったとはいえ、14試合負けなしの状態が続いている福岡。次節の明治安田生命J2リーグ第29節、福岡vs千葉(10月25日 14:00K.O@ベススタ)では、3試合連続で無失点中の千葉をホームに迎える。「縦軸」の最前線でターゲットとなるフアンマ デルガドが累積警告で出場停止となるが、チームとしてどう乗り切るのか。アビスパの「縦軸」に注目してゲームを見てみたい。

文:佐伯 渉

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アビスパ福岡 2020プレビュー|10月25日 福岡 vs 千葉
https://www.football-lab.jp/fuku/preview/?year=2020&month=10&date=25

アビスパ福岡 2020 シーズンサマリー
https://www.football-lab.jp/fuku/

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