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コラムColumns~J3からJ1への挑戦状~「福島が育てたチャンスメーカー」池田昌生。

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~J3からJ1への挑戦状~「福島が育てたチャンスメーカー」池田昌生
2021.2.5

 例年にも負けず劣らず、活発な移籍動向を見せた2021年のオフシーズン。さまざまな選手が新たなステージでの挑戦を決意した中で、今回はJ3からJ1への「飛び級移籍」を果たしたJ3のアシスト王、池田昌生にスポットライトを当てたい。



J3からJ1への移籍

 まずは、2020シーズンにおいてJ3にて試合出場し、今季J1のクラブへ移籍することが決まった選手の一覧を確認しよう。

 もともとJ1のクラブが保有していてJ3へ期限付き移籍していた選手のレンタルバックや、各チームでおよそ4人の枠があるGKなどは比較的飛び級移籍のハードルが低いと想定される。その中で、フィールドプレーヤーとしてJ3の主力に定着し、J1への移籍を果たしたという点に注目すれば、福島の池田昌生と、秋田の韓浩康の移籍がかなり特殊な挑戦であることが分かるだろう。もちろん、福島は湘南と提携関係にあるクラブであることや、秋田は昨季J3に所属したチームとはいえ、圧倒的な強さで優勝を果たしてJ2昇格を遂げたチームであることなど、それぞれJ1クラブへの飛び級移籍に対してある程度説明をつけられる事情は確かに存在する。それでも、フィールドプレーヤーの「飛び級移籍」は注目に値することには間違いない。
 特に、池田昌生は昨季J3でアシスト王(10アシスト、1位タイ)に輝いた逸材だ。池田の強みとは何なのか、一体どのような特徴を持つプレーヤーなのか。彼がJ3で残したデータについて「2019年と2020年の比較」を主に、読み解いていく。


右サイドから中央へ プレー位置の変化

 昨季の池田について、まず挙げられる大きなトピックは「ポジションの変更」だろう。高卒ルーキーとして福島に加入した池田は、1年目からFWや右サイドを中心に出場を重ね、2年目には主力の座をつかんで32試合で先発出場。そのほとんどが、4-4-2、もしくは4-1-4-1における右サイドハーフのポジションだったのだ。だが、3年目となった2020シーズンは、9節の讃岐戦で1トップ・イスマイラのすぐ後方から攻撃を支える2シャドーの一角として起用され、徐々に中央での出場が増加。10月以降は右サイドよりも中盤での起用の方が中心となり、最終的には3-4-2-1の2ボランチの1枚として定着した。

 ボールタッチ位置を図で比較すると、そのポジションの違いは一目瞭然である。2019シーズンは多くのプレーを右サイドのタッチライン際で行っていたのに対し、2020シーズンは中央や左サイドでのプレーが増加した。サイドの選手から、中盤を主戦場とする選手へと変貌したのだ。

■より「危険な選手」へ

 2019年から2020年にかけて最も変化が出たスタッツは「ラストパス数(28本→52本)」で、前年比でほぼ倍増する結果となった。上図でラストパスの軌跡を確認すると分かるように、右サイドから中央へのラストパスが主だった2019年に対し、2020年は左や中央からのラストパスが増加。それだけでなく、もともとの強みである右側からのラストパス数も格段に上昇した。5節の藤枝戦(ハイライト動画より抜粋)や、21節の熊本戦(ハイライト動画より抜粋)で見せた「一瞬で展開を変えるパス」は、もはや池田の代名詞となりつつある。2020年はプレーエリアをピッチ全体に広げたのみにとどまらず、より味方のシュートに直結するプレーをこなせる選手へと進化を遂げたのだ。また、ペナルティエリアへの進入回数が増加した(53回→66回)ことや、攻撃CBPの増加にも表れているように、これまでに比べてゴールへ直接つながるプレーを多く仕掛け、「相手にとってより怖い選手」へと成長したと言える。

以前からの強みは継続して発揮

 では、ポジションやプレーを大きく変えた中で、彼がこれまで持っていた「もともとの強み」は昨季どのように変化したのだろうか。読者の中でこれまでJ3をあまり見てこなかった方へ池田の特徴を紹介する意味でも、以前からのストロングポイントとともにここでおさらいしたい。

 まずは、シュート意識についてだ。2019年のペナルティエリア外からのシュート数がリーグ6位となる30本であるように、もともと積極的にゴールを狙う姿勢は池田の持つ強みとして知られる。では、2020年はどう変わったのか。ポジションがより後方へ移ったシーズンとなり、単純に考えればシュート関連の数字は下降するはずだが、実際に数字を見てみると、シュート数に関してはほぼ変わらない結果を残しており、ペナルティエリア外からはリーグ2位となる43本に増えていることが分かる。中盤からでも常にゴールを意識し、1試合平均1本以上のペースでシュートを放ち続けていたのだ。

 また、巧みなキープ力を生かし、敵陣を持ち上がるプレーも池田の特徴である。ドリブル数(相手との対じが条件)については、昨季より数字を落としたが、ボールを持ち運ぶプレーに重点を置き、「前方への20m以上のキープ成功数」に着目すると、より良い数字を残している(リーグ5位)。この、前方へのキープの具体例として、最も印象的なのは23節の長野戦でトカチの劇的決勝弾を生んだプレーだろう(ハイライト動画より抜粋)。試合終了間際という時間帯にもかかわらず、自陣から敵陣までスピードに乗って長い距離を持ち上がった姿は、彼がボールを持ち運ぶ能力を高いレベルで備えていることをあらためて証明した。
 そして、池田の特徴の中でもうひとつ忘れてはならないのが、献身的な守備プレーである。福島のアタッカー陣の中でも守備の貢献に定評があった池田は、2020年も遺憾なくその能力を発揮。前述した23節のアシストも彼の奪取から生まれたプレーであり、9節の讃岐戦でチーム4点目をお膳立てした池田のパスも、自らの中盤での奪取からつながったものである(ハイライト動画より抜粋)

 これらで分かるように、ポジション変更を筆頭に大きな変化を見せた池田昌生の2020年だが、決して「プレースタイルを完全に変え、別の選手へと生まれ変わって成功した」のではなく、「これまで継続して積み上げてきた強みを生かしつつ、新境地を開拓した」のだ。純粋にできるプレーの幅が格段に増え、昨季の福島にとって欠かせない選手へと上り詰めた。
 
 
J1への挑戦

 攻守にわたる貢献、ゴールのお膳立てや持ち上がるプレーなど、プレーの幅が広がった池田は今季から湘南に所属することとなった。湘南が昨季のシステムを踏襲すると仮定すれば、池田が最も輝くのは攻撃的なセンターハーフかセカンドトップ気味のFWとしてだろう。このポジションには茨田陽生、タリク、山田直輝、新加入の中村駿など、豪華なメンバーが名を連ね、厳しいポジション争いが待ち構えていることは間違いない。それでも、ついにつかみ取ったJ1という舞台で、「背番号27」をまとう彼が躍動することを願ってやまない。


文:増田 椋斗

・関連リンク
池田 昌生 選手ページ
https://www.football-lab.jp/player/1618074/

池田 昌生 2019年と2020年の比較
https://www.football-lab.jp/comparison/player/2019/30674/1618074/2020/30674/1618074/

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