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なでしこジャパン 東京五輪グループステージの振り返り
2021.7.30

東京五輪グループステージを1勝1分け1敗で終え、辛うじてノックアウトステージへと進出したなでしこジャパン。準々決勝のスウェーデン戦を前に、これまでの各スタッツを踏まえて振り返ってみる。


最も気になる点は、直近の親善試合と本大会との戦い方の違いだ。対戦相手の実力によって各種スタッツは相当異なっており、それがそのまま現時点での立ち位置を示しているといってもいいだろう。理想はボールを握ってのゲーム運びなのだろうが、体現できているとは言い難い。マッチメイクの難しさはあったにせよ、本大会を想定した上での戦い方ができていたかどうかは疑問が残る。

4月、6月に行われた親善試合では大勝を収めた一方で、壮行試合となったオーストラリア戦、本大会でのカナダ、イギリス戦では思うようなボール回しができず、苦戦を強いられた。パス数、パス成功率ともに減少傾向にあり、エリア別に見てもパスのA3rd(アタッキングサード)比率が低くなっている。対照的にチリ戦はA3rdでのボール回しが増加した。勝利が必須という背景があったにせよ、非常に顕著な値となっている。

対戦相手のFIFAランキングも掲載しているが(6/25時点:イギリスは参考までにイングランドの順位)、常にランキング通りの試合内容となるわけではないものの、現状では1桁ランクのチームに対しては主導権を握れずにいる。

高い位置でボールを握る時間が減少した結果、急所を突く攻撃も減った。PA(PA:ペナルティエリア)進入数を見ると、30回を超えていた親善試合と比べ、カナダ、イギリス戦ではPA進入数が1桁だ。そうなるとシュートのエリアもPA外からが多くなってしまう。

親善試合では大量点を挙げていたものの、シュートのPA外比率は2割に満たず、PA外から奪ったゴールはわずかに1だった。本大会では各試合の総シュート数こそ10本以上を記録しているが、カナダ、イギリス戦は6割以上がPA外から。本数自体を見ても、すべての試合で4月、6月の親善試合の平均である5.3本を上回っている。ボールを持てていたチリ戦ですらも、半数近くがPA外シュートだ。

確かにカナダ戦の岩渕真奈のゴールは見事だった。しかし、得点の確率を上げようとするのであれば、PAを突く攻撃が必要ではないだろうか。もしくは、本大会での対戦国が分かった段階で、PA外から攻略法を事前の試合で編み出すなどだ。もちろん、あえて手の内をさらさなかった可能性もある。

敵陣でポゼッションをするためには高い位置でボールを奪うのが理想だ。ボールゲイン(守備から攻撃への切り替え)のエリアを見ると、敵陣比率が50%近くあった親善試合と比べ、本大会では低い割合になっている。特に、イギリス戦では14.5%まで下がっており、回数はわずかに9しかない。ボールゲインの平均位置(自陣ゴールラインからの距離)は、4月、6月の試合で50.3m。一方の本大会ではチリ戦が40mを上回ったが、イギリス戦では32mとなった。相手の攻撃の起点をつぶし切れず、ボールを奪う位置がかなり低くなってしまったことがわかる。

さらに強豪国相手では、ボールロストの自陣割合が30%前後と、非常に高くなってしまった。フィジカルに優れた相手が前線からプレッシャーをかけてくると、狙い通りにボールをつなぐことができず、奪われがちになる。ワールドカップやアメリカ遠征でもささやかれていた課題であり、現時点でも解消されてはいないようだ。

前述の通り、自陣でボールを失うことが多かったこともあり、被PA進入数も多くなっている。それに伴って被クロスや被シュート数も増加しているが、カナダ戦・イギリス戦ともに被枠内シュートは失点につながった1本のみ。大半は守り切れていたことを評価すべきか、その中でも点を取られたことを疑問視すべきかは意見が分かれるところだ。

その2戦に先発フル代表を果たした南萌華は自陣での空中戦勝利数が8回、勝率は100%だ。カナダ戦の失点時のように誘い出されなければ、中央は堅いと言えるだろう。キャプテンの熊谷紗希もチーム最多のシュートブロック数を記録。また、劣勢のイギリス戦で気を吐いた杉田妃和はドリブル数、タックル数で1位となっている。

スウェーデンはFIFAランキング5位であり、クロスからの得点が多い。これまでの日本の戦い方を踏まえると、劣勢の展開が予想される。ただ、守備陣は大崩れしているわけではなく、CB陣も奮闘しているため、隙を見せなければ失点を防ぐことはできそうだ。攻撃陣では田中美南が出場時間の限られた中でもチーム最多のシュートを放っている。カナダ戦ではPK失敗があったものの、ボールの引き出し方は秀逸。チリ戦では値千金の決勝点をマークした。辛抱強く戦ってチャンスをうかがえば、勝機は訪れるかもしれない。

文:江原 正和

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