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横浜FMvsFC東京プレビュー 「最終ラインの裏」に関わるデータとは
2019.12.6

※このコラムはスポーツアナリティクスアドベントカレンダー2019の6日目の記事です。

2019明治安田生命J1リーグは今週末に最終節を迎え、優勝を目前にしている横浜FMが2位FC東京との直接対決に挑む。4点差以上の敗戦でなければ順位が入れ替わることはないが、サッカーにおいて予想の範囲を超えるスコアが生じる可能性は0ではなく、つい先日のJリーグの試合でも目にしたばかりだ。よって横浜FM側が慢心に浸る理由はなく、FC東京側が諦める理由も全くない。

図1:勝点推移と主な出場選手

これまでの勝点推移を見ると、FC東京は序盤から好調で多くの期間を首位で過ごしたが、少しずつ失速。一方で横浜FMは浮き沈みがあったものの、終盤は絶好調で連勝街道を突き進んでFC東京を追い抜いた。夏の移籍市場が活発化し、両チームとも主力が抜かれる状況となったが、それでも成績が大きく下がることはなく、優勝を争う位置をキープした。

図2: チームスタイル指標

両チームの平均ポゼッション率は横浜FMが61.6%でリーグトップ、FC東京が45.6%となっており、ポゼッションの横浜FMとカウンターのFC東京という構図が想像できるが、Football LABに掲載しているチームスタイル指標を見ると、横浜FMも特にショートカウンターの指数が高く、攻め手の多さを感じさせる。相手保持時では互いにコンパクトだが、横浜FMは最終ラインがリーグの中でも圧倒的に高い。

チームスタイルの被データを読み解くと横浜FMはラインが高いこともあり、ロングカウンターを受ける傾向にある。やはりFC東京のロングカウンターがハマるかどうかはこの試合の重要なポイントとなるだろう。

図3: スプリントデータ

この2チームはスプリント数(24km/h以上で1秒以上走行)において1位、2位を記録しており、特に横浜FMはトラッキングデータの取得を始めた2015年以降で1試合平均のスプリント数の最多記録を更新しようとしている。そのスプリントを保持時と相手保持時に分け、それぞれのポジション毎に集計すると図のようになった。

保持時において横浜FMはウイングの選手が最も多く、前方中寄りへのスプリントが目立つ。彼らに加えて中央の2選手も多く、前線の4選手が保持時のスプリントの中心となっている。一方のFC東京の保持時スプリントの多くは2トップに偏り、次に強い傾向を示したのはサイドの選手となった。左サイドバックよりも右サイドバックの方が多いのも特徴の1つと言える。不安があるのはスプリント数トップ3の永井とディエゴオリヴェイラが前節に負傷交代となり、右サイドバックの室屋が出場停止となる点だ。フォーメーションも含め、これまでとは違う傾向となる可能性がある。

保持時以上に相手保持時の両者の違いが大きく、ラインが高い横浜FMは最終ラインの選手の後方へのスプリントが圧倒的に多い。逆にFC東京は突出したスプリント数を記録するポジションがなくDF、サイド、FWのスプリントがチーム内の上位となっている。これも両者のチームスタイルの違いから表れた傾向と言えるだろう。両チームともにセンターバックの選手のスプリント数が2選手で大きく異なる傾向にあり、守備での役割の違いや近いサイドバックの選手との関係が影響している。スプリントの数そのものだけが評価となるわけではないので、その点は注意したい。

図4: FC東京の守備関連データ

相手のボール保持時間の方が長いFC東京だが、4点のリードを得るためにはボール奪取の数は増やしたいところだ。FC東京は他のチームと比較してハイプレスを積極的に仕掛けるようなチームではなく、マイボールとした割合も低い。相手のパス時の寄せの距離も他のチームより遠い傾向にあり、プレッシングを行う割合も低い。ボール保持者に食い付くことで相手にスペースを与えたくないという意識がデータに表れている。相手のボール保持時間が長いにも関わらず最終ラインの突破を許した数がリーグで3番目に少ないのも、こういった守備の成果だ。裏を取ろうとする相手選手への寄せのスピードは早く、リーグの中でも裏を取られる警戒心は強いと言える。対戦する横浜FMは相手の最終ラインを突破した数が最も多いチームであり、この戦いにおいてどちらに軍配が上がるかはとても興味深い点だ。加えて「得点を取らなければならない」という意識が、これまでの守備の長所を消すことになるかもしれない。FC東京がどういったゲームプランを用意し、「焦り」を制御しながら試合に落とし込むのかが鍵となるだろう。

図5: 横浜FMのパスデータ

夏の対戦では敗れているだけに勝利を得た上でチャンピオンの座を手にしたい横浜FMは、FC東京の守備をどう破壊するかが課題となる。現在は4-2-1-3のフォーメーションで戦う試合が多いが、後半戦の多くの試合でスタメン出場をしていた扇原が出場停止となる。長短に関わらず正確なパスを放つ彼の不在は大きいが、特定の選手の不在を感じさせないチーム力を見せてきた横浜FMならば、このハードルを問題なく乗り越えられるはずだ。

ゴールを奪う上での注目点は先に述べた相手DFの背後の奪い方がポイントとなるだろう。その手段の一つであるスルーパスにおいて今季リーグ1位の数値を記録しているのが横浜FMだ。相手が4バックの際にどのポジション間にスルーパスを放ったのかトラッキングデータから出力したところ、相手の左サイドバックと左センターバックの間が最も多かった。このスルーパスの受け手のトップはスプリント数トップの仲川だ。この2選手間のポジショニングと仲川の走行を追い、どういったタイミングでスルーパスを狙うのか注目するのも面白いかもしれない。

優勝決定戦となる最終戦を控え、負傷者、出場停止によりいくつかのプラン変更を強いられる両チームが、それぞれどのような準備を行って試合に落とし込むのか。文字通りチーム力を問われる一戦となり、一瞬たりとも目が離せない展開となるだろう。

八反地 勇

関連リンク
チームスタイル指標とは
https://www.football-lab.jp/pages/team_style/

6/29 FC東京 4 – 2 横浜FMのマッチレポート
https://www.football-lab.jp/fctk/report/?year=2019&month=06&date=29

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