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コラムColumns攻撃の終着点から始発点へ。データから浮き彫りになった愛媛の課題。

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攻撃の終着点から始発点へ。データから浮き彫りになった愛媛の課題
2020-10-07 18:00 RSS

DataStadiumアナリストに訊く vol.6

「DataStadiumアナリストに訊く」では、アナリストを交えたインタビュー形式のコラムで、サッカーの面白さや新たな気付き・視点を与えられるような連載を目指します。

今回はデータスタジアムのアナリスト、久永 啓 さんに訊いてみました。

——前回コラムでは試合を見るポイントについて教えていただきましたが、今回はデータを見るポイントを教えていただきたいです。もちろん複数あると思いますので、なにか1つ初心者にも分かりやすいものをお願いします!笑



[久永] 私がチームのデータをチェックする際の見方についてお話できればと思います。前回は守備の話題でしたので、今回は攻撃でいきましょう。

まず、サッカーで大事なのは得点を奪うことなので、まずは得点を取れているかどうか。その得点を取るためにはシュートを打つことが必要ですので、シュートが打てているかどうか。そのシュートを打つために、ペナルティエリア内にどのくらい進入できているか。ペナルティエリア内に進入するために、アタッキングサードでプレーできているか……、というように攻撃面でゴールから「遡る」ようにしてスタッツを見ていきます。



——なるほど、面白いですね。攻撃の終着点から始発点に遡ってみるわけですね。


[久永] その通りです。例として、今回はJ2の愛媛FCに焦点を絞ってデータを見てみようと思います。J2で下位に沈んでいる要因について探ってみましょう。

愛媛FC スタッツ紹介※第23節終了時点

まず、愛媛のデータを表にまとめてみました。先述のスタッツの見方でお話ししたように、最初は得点数から。こちらは24試合で22得点(1試合平均0.92点)と、リーグで3番目に少ない得点数です。1試合平均のゴール期待値も0.976なので、概ね期待値通りの得点数となっていて、例えば多くあるチャンスを決定力の欠如で逃してしまっている、という状況ではないことが分かります。



——「決定力不足」という言葉で安易に片付けられてしまいがちですが、愛媛の得点数の少なさには、それなりの理由があるということですね。


[久永] 次にシュート数を見ると、こちらはリーグ最少の218本(1試合平均9.48本)であり、1試合平均シュート数が10を下回っているのは愛媛のみでした。シュート数が少ないということで、ペナルティエリアへの進入数やアタッキングサードへの進入数も少ないということが予想されますが、データを見ればそれそれリーグ内で18位、19位となっています。また、私は攻撃効率と呼んで分析しているのですが、愛媛はシュートまでに至った攻撃効率(至シュート数/攻撃回数)がリーグで最も低い8.1%でした。

ただ、注目してもらいたいのは、ここからです。さらに攻撃の始発点に遡ってデータを見てみると、突如リーグ上位の本数や成功数、成功率を記録するデータが出てきます。


——たしかにディフェンシブサード(DT)からのパス数、成功数はリーグ2位、成功率はリーグ3位ですし、ミドルサード(MT)からのデータもリーグ上位のものが多いですね。


[久永] ディフェンシブサードからのパス成功数は1位が徳島で2位が愛媛、3位が東京Vです。リーグ内でも攻撃的なポゼッションサッカーを志向するスタイルのチームと肩を並べています。つまり、ロングボール主体のサッカーではなく、最終ラインからパスで組み立てるサッカーをやろうとしているのに、アタッキングサードで効果的な攻撃ができていないことが課題だと感じています。


——良い攻撃ができていない要因はどこにあるのでしょうか?


[久永] チームとしてアタッキングサードでボールを受ける攻撃や連動したアクションが足りないと感じています。同じ絵を描いて意図的な攻撃をするイメージでしょうか。意図的な攻撃ができていれば、シュート数やアタッキングサードへの進入数など、終着点に近い種類のスタッツの数値は自ずと上がってくるはず。先ほどのペナルティエリア進入回数も少ないからダメだというわけではありません。ただ、愛媛のやろうとしているサッカーを考えれば、もう少しペナルティエリア進入回数が増えてこないと、というわけです。


——なるほど。スタッツが多い、少ないというのはチームのスタイルとセットで考えないといけないわけですね。では、最後に愛媛が今後浮上するために期待している選手はいますか?


[久永] 東京オリンピック世代でもありますし、私が以前所属していたサンフレッチェ広島つながりということで長沼 洋一川村 拓夢に期待しています。

長沼洋一と川村拓夢

ドリブル数がチーム内でダントツの1位である長沼選手はチャンスを作れるプレーヤーですし、シュート数もチームトップ。彼の攻撃能力を生かさない手はないと思うので、長沼選手がもっと高い位置で勝負できる場面が増えてくれば、愛媛の結果も上向いてくるかもしれません。

そして、個人的には小学生時代からプレーを見ている川村選手にも期待しています。


——小学生時代から見ているんですね!川村選手の良さや強みはどこにありますか?


[久永] ボランチ2枚の組み合わせをより高い位置でプレーする選手と低い位置でプレーする選手に分けるとすれば、彼は高い位置でディフェンスラインから良いボールを引き出して前につなげていく役割を担っているようですが、攻撃のスイッチを入れるようなプレーができる選手です。愛媛でも彼の縦パスが良い形で前線に入ってチーム全体がスピードアップするような場面を目にすることがありますが、もっとそのようなシーンを増やしてほしい。彼の縦パスやサイドチェンジには期待したいですね。

J2で下位に沈む愛媛だが、現在は4試合連続で無失点ゲームを続けている。ただ、肝心の得点は4試合で1点のみ。今後の浮上に向けて意図的な攻撃が増えてくるのか、注目していきたい。

次節の明治安田生命J2リーグ第25節、徳島vs愛媛(10月10日 14:00K.O@鳴門大塚)では、首位の徳島を相手にどのようなサッカーを見せるのか。リーグ再開初戦でもあった前回対戦では、前半を3失点で終えての後半4得点を奪って逆転勝利という劇的な戦いを披露してみせた。今回の「四国ダービー」も熱い一戦になるのか、週末を楽しみに待ちたい。

文:佐伯 渉

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愛媛FC 2020 シーズンサマリー
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