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コラムColumns欧州へ羽ばたいた若武者たち 2021夏part1。

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欧州へ羽ばたいた若武者たち 2021夏part1
2021-08-16 12:00 RSS

 今夏、J1リーグから新たに欧州の舞台へ旅立った日本人選手たちがいる。
今回は第一弾として、田中碧(川崎フロンターレ→フォルトゥナ・デュッセルドルフ)、川辺駿(サンフレッチェ広島→グラスホッパー・クラブ・チューリッヒ)、オナイウ阿道(横浜F・マリノス→トゥールーズFC)の3名にフォーカスをあてる。
そして第二弾では、三笘薫(川崎F→ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFC)、林大地(サガン鳥栖→シント=トロイデンVV)の2名を後日に取り上げていく。
なお、古橋亨梧(ヴィッセル神戸→セルティックFC)に関しては以前別コラムで取り上げているため、是非ご覧いただきたい。

 まずは、U-24日本代表として東京オリンピックも戦った田中碧から紹介する。田中は川崎Fのアカデミーからトップチームへ昇格し、2018年のJリーグデビュー戦で初ゴールを飾っている。<ゴール動画>

 昨年はリーグ戦31試合に出場してクラブ3度目のリーグ制覇に貢献。今季もチームの主力選手としてリーグ戦20試合に出場し、1ゴール4アシストの結果を残した。川崎Fのフットボールには欠かせない攻守の切り替えで主に力を発揮し、川崎Fの“心臓”と呼んでも過言ではない活躍を見せて旅立ったのだ。

 田中のスタッツはリーグ全体でも群を抜いている。ボランチまたはインサイドハーフで先発した試合でのスタッツを見ると、パス本数は1438本で1位タイ、成功本数は1189本で2位(1試合平均ではどちらも1位)。スルーパス数と成功本数は46本と25本でそれぞれ1位と1位タイと、“量だけでなく質”も伴っていることが分かる。さらに、「チームがボールを奪ってから5秒未満の間に限定したパス(本人のボール奪取も含む)」に注目すると、田中のパスから3プレー以内にシュートに至った回数は25回で、これはリーグ2位の14回を大きく引き離した数字となっている。また、相手のディフェンスラインを突破したプレー数でも43回で1位となるなど、ゲームメイクだけでなくチャンスメイクもできるワールドスタンダードな選手と言えるだろう。

※ディフェンスラインを突破したプレー
相手のセンターバックの平均ラインより手前でのプレーを対象とし、次のプレーが前プレー時点のその平均ラインを超えている場合にカウント。自らのボールキープによる突破とパスの受け手が突破しているケースがある。

 次に川辺駿を見ていく。ジュビロ磐田から3シーズンの期限付き移籍を終えて2018年に広島へ帰還。すると、磐田時代から定評のあった技術と運動量を存分に発揮し、復帰初年度からクラブの主力選手として活躍を見せる。以降も高いパフォーマンスを維持し続け、今年3月には待望の日本代表にも初選出。さらに今夏は「小さい頃からの夢」だったと語る欧州移籍まで成し遂げている。

 まさに順風満帆なキャリアを送っている真っただ中の川辺だが、彼の特徴はなんといっても“走力”にある。今季のトップスピードは34.2km/hで、これはボランチで先発出場した選手の中で1位の記録となっている。また、スプリント回数も302回で3位と、川辺が素晴らしい速さとタフさを持っていることを証明するスタッツが出ている。

 次に2018シーズンから今季までのボール奪取数を年度別で比較すると、年を増すごとに数値が増えていることが分かる。これらにはクラブの戦術など他の要素も絡んではいるものの、川辺が現代サッカーにおいて必須と言われるトランジションの部分に多く関わっていることを表している。

※ボール奪取
相手チームの攻撃から自チームの攻撃に切り替わった最初のプレー

 最後にオナイウ阿道だ。2017年に3シーズンに渡って在籍していたジェフユナイテッド千葉から浦和レッズに完全移籍。だが、出場機会はリーグ戦1試合のみと実力を発揮できず、翌年にレノファ山口へ期限付き移籍。そのシーズンでは全42試合に出場して22ゴールを挙げ、J2得点ランキング2位の結果を残した。その活躍が認められ、2019シーズンから大分トリニータへ期限付き移籍をしてシーズン10ゴールと二桁得点をマーク。翌年に浦和には戻らず横浜FMへ完全移籍。横浜FMで2年目の今季は20試合で12ゴールの活躍を見せていた。また、今年6月に追加招集という形で2度目となる日本代表に選出。代表初ゴールを飾った勢いのまま、ハットトリックも達成している。

 そんなオナイウの強みはやはり“得点力”だ。2018年のJ2山口で22点を挙げた時の90分換算ゴール数は0.52であり、今季の0.85の数字はそのJ2での記録や過去のJ1シーズンを上回っている。シュートの枠内率も高い水準にあり、J1通算4シーズン目となる今季は満を持して得られた結果と言えるだろう。


 以上、今回は上記3名のスタッツを踏まえて紹介した。3者とも初の海外クラブへの挑戦ではあるが、ここ数シーズンの彼らのスタッツは、しっかりと経験を積み、実績も残して熟した選手たちだと証明している。これからも彼らの活躍を見守っていきたい。
 また、次回では第二弾として、三笘と林の両名を取り上げる。このコラムを読んで興味をもっていただいた方々はぜひ、次回も楽しみにしていただきたい。

文 鬼澤 優作


■関連ページ
コラム 欧州へ羽ばたいた若武者たち 2021夏part2
https://www.football-lab.jp/column/entry/813/

田中碧 選手ページ
https://www.football-lab.jp/player/1603854/

川辺駿 選手ページ
https://www.football-lab.jp/player/1300179/

オナイウ阿道 選手ページ
https://www.football-lab.jp/player/1400082/


2021-08-16 12:00 RSS
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