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J3の新一年生、いわきFCの強さを探る
2022-06-02 07:00 RSS

明治安田生命J3リーグは2014年にスタートし、今季が9年目のシーズンとなる。注目度においてはJ1、J2に負けてしまう面もあるが、Jリーグに新たに加わったチームが初めて戦うリーグであり、行ったことのない地域への遠征、そして目新しいエンブレムの付いたユニフォームをまとった選手たちを見ることができるのはJ3の特権と言える。

年齢制限のある特殊チームを除いたJ3のスタート翌年以降の新規参加クラブを下表にまとめたが、昨季までのチームは中位以上の成績を残しており、シーズン中のいわきも良いスタートを切っている。

J3新規参加成績一覧

それぞれのチームのスタイルを見てみよう。各チームページにも掲載しているチームスタイル指標は該当の攻撃の多さを表す指数と、クオリティを評価する上での材料としてその攻撃からシュートに至った割合を掲載している。
チームスタイル指標とは

チームスタイル指標比較

この図からも各チームの強みがデータとなって表れている。特に圧倒的な攻撃力を誇った2015の山口はカウンター、ポゼッション共に高い数値を記録。昨季の宮崎も指数としてはポゼッション型でありながらカウンターのシュート率も高く、多彩な攻撃手段を持っていた。いわきはまだシーズン途中のため過去のチームとの単純比較はできないが、カウンター攻撃とセットプレーのチャンス創出に強みがあり、ポゼッションの方も機会は少ないがシュートへ持ち込める力を一定以上持っていることが分かる。

チームスタイル指標の被データ

チームスタイル指標の被データも見てみよう。被データとは対戦時の相手側のデータのことを指す。チームスタイル指標の被データの場合、指数は少ない方がその攻撃を相手にやらせていないというデータとなり、被シュート率も少ない方が良いという見方となる。過去のチームのデータを見ると、指数もしくは被シュート率を下げる秀でた項目が複数存在しており、相手にやらせない一面を持っている。今季のいわきも相手のポゼッション攻撃、被ショートカウンターへの対応力があり、少ない失点につながっている。

ここからは今季のいわきに注目してみよう。現在2位のいわきはFootball LABに掲載している独自データ上の中では、AGI、KAGI、チャンスビルディングポイントのうちのボール奪取においてトップの数値を記録している。この3つのデータでトップという傾向は2020年のJ1を圧倒的な成績で優勝した川崎Fと同じだ。

AGI,KAGI,ボール奪取ポイント

AGIはボール支配時間とペナルティエリア進入やアタッキングサードでのボール支配を絡めたデータであり、簡単に言えば相手を押し込んだ攻撃ができていれば高い数値となる。KAGIはこの逆の指標であり、相手に危険なエリアで何もさせなければ高い数値となる。
KAGI,AGIとは

いわきは現時点でどちらの指標もトップを記録しており、攻守両面で良い傾向が表れている。この状況を支えているのが、ボール奪取ポイントの高さだ。このポイントは奪取した位置や、奪取前の相手のプレーの方向や距離に影響される。いわきの場合まずボール奪取の平均ラインが最も高く、本来高い数値を記録する相手のドリブルを除いたボールキープ成功率、ショートパス成功率を低く抑える傾向にある。こういったプレー選手から短い距離でのボール奪取は相手の守備への切り替えをわずかながら遅らせることができるため、ショートカウンター攻撃を得意とするチームにとっては最適なボール奪取と言える。

2種類の被成功率

そのショートカウンター攻撃からシュートに関与した選手を抽出すると、特徴的なのは右サイドバックの嵯峨理久がランクインしていることだろう。J3は3バックを採用しているチームが多いためサイドバックのみでの比較が難しいが、ウイングバックを含めても最多タイとなっている。シュートまでの道程のみならず自らも4本シュートを放っており、表にはないが逆サイドの日高大も同じ数値を記録している。カウンター攻撃におけるシュート数はFWに偏ることが多いが、運動量を駆使して多くの選手が絡むことで相手DFを惑わせ、厚みのある攻撃ができていると言える。

ショートカウンターのシュート関与

いわきのネガティブなデータは少ないが、その中で一つ挙げるとすれば、被ドリブル成功率の高さ、つまり相手のドリブルを阻止する割合の低さだ。ゴールに近いドリブルは、シュートを放つためのドリブルとクロスが目的のケースに分けられるが、いわきは被ドリブル後の被シュート、被ドリブル後の被クロスがともに多い傾向にある。いわきは空中戦勝率が高く、外からの高いクロスから競り合いが生まれても跳ね返す力があるため、大きな弱点とはなっていないが、失点機会を避けるためにももう少しドリブルを阻止したいところだ。プレーデータにおける空中戦はあくまで競り合いに対して触ったかどうかのデータであり、ハイボールへの対処に関する評価を全て含めたものではない。いわきはヘディングの被シュートを21本打たれているが、このうちの12本は空中戦が発生しておらず、競り合えていない状態でヘディングシュートを打たれている。この数値もリーグでは多い方であり、全体の被シュートが少ないいわきにとっては比率的に高い現象となっている。

3種類のデータ

こういったポジティブなデータの裏に潜む課題をクリアし、今後のいわきがどのように成長していくのか。J3の優勝争いにも大きく関わることが予想され、目が離せない存在となるだろう。

八反地勇

いわきFC シーズンサマリー
https://www.football-lab.jp/ifc/

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