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時間帯と点差でデータはどう変化するか
2022.7.26 RSS

試合開始早々に応援しているチームが先制をした際に「このまま試合が終われば」と願うサポーターは多くいるだろう。しかし時間を飛ばす、もしくは加速させる能力を持つのは創作物の世界の住人のみであり、どのような名選手であっても時間を動かすことはできない。定められた90分の中でゲームをどのようにコントロールするかが求められ、スコアの状況によってそれは変化する。今回はその中身を知るために試合の時間帯とその時の点差毎のデータを探っていこう。

今回の分析は2020年以降のデータを利用するが、まずこの2020年という基準について触れよう。2020年シーズンはJ1、J2の開幕節が終わった後にいわゆるコロナ禍に突入し、特殊な状況で試合が開催されている。試合のルールもこの影響を受け、交代枠や飲水タイム取得機会が増えた(後者は猛暑の影響もある)。下図は2017-19年(灰色)と2020年以降(赤色)の時間帯別のアクチュアルプレーイングタイム(インプレーの時間。以下APTと略す)と選手の総移動距離をグラフ化したものだが、前後半それぞれ20-25分の間だけ大きな違いがあり、試合が止まっている影響を大きく受けている。この影響に加え、J1ではVAR導入もあってり追加時間が増えたため、各ハーフのアディショナルタイムのAPTと総移動距離は2020年以降の方が高い数値となった。前半のアディショナルタイムだけ異常値のように見えるのは、この時間帯のみ1分程度で終わるケースが多いからである。

時間帯別のAPTと総移動距離

こういったレギュレーションの変更の影響を考慮して、以降のデータ集計は2020年以降をベースとした。では、点差はどのように動いていくのか。5分毎に点差を抽出して下図にまとめた。

時間経過と点差

当たり前だが、対戦する両者の順位差が最大値であっても全ての試合は0−0、点差0からスタートする。そしてサッカーの試合結果において最も多い点差は1であるため、試合終了時は点差1の割合が最も大きい。点差0の割合の減り方は序盤が大きいが、その後同点に追い付くケースも多々あるため、少しずつ割合の変化は滑らかになっていく。まずこの特徴を頭に入れておきたい。

上図の傾向から、点差の範囲を2点以上のビハインド(-2)、1点ビハインド(-1)、同点、1点リード(1)、2点以上リードの5つに分類してデータを見ていこう。ただし退場者が出た試合は、プレー人数の差異もデータに影響するためデータから除外する。

点差・時間帯別の保持率と攻撃時間

まず時間に関わるデータからボール保持率、1回当たりの攻撃時間をまとめた。同点時のボール保持率についてはどちらも同点状況なので50%で一直線となる。見て頂きたいのはリード時、ビハインド時の方で、1点差、2点差ともに分かりやすく差が生まれており、リードしているチームよりビハインドのチームの方が高い保持率なっている。特に終盤の1点差は60:40ほどの差となった。前半に先制点が生まれた際に解説の方や監督のハーフタイムコメントで「0−0の気持ちで~」というワードが出てくるが、実際には前半早々からスコアが動いた時点で保持率はビハインドチームが上回る状況になっている点は興味深い。

1回当たりの攻撃時間もボール保持率と近しい傾向で、リードチームが短くビハインドチームが長くなっている(この場合の攻撃とは1チームが連続で行ったプレーの集合体のことで詳しくはこちらのコラム『プレーのつながりをグループ化した「攻撃」データについて』を参照して頂きたい。)。全体傾向として各ハーフとも緩やかな山を描くようなグラフとなっており、後半アディショナルタイムが最も攻撃時間が短くなっている。

点差・時間帯別のセットプレー切替時間

セットプレー切替時間は、セットプレーを獲得した際にどれだけ時間をかけているかというデータで、ボールアウトからスローインやコーナーキック、ゴールキック、被ファウルからフリーキックまでの時間などを計算したものだ。アウトプレーの時間内には多くの事象が起き得るため、1分以上かかっているものは計算外とした。このグラフは実に分かりやすい傾向が出ており、リードしているチームは時間をかけ、ビハインドチームは早くリスタートしている。交代枠の利用などアウトプレー中のアクションが増える後半はその差が顕著に表れており、リードチームとビハインドチームの差は約10秒も開いた。

点差・時間帯別のこぼれ球奪取データ

こぼれ球奪取の数や奪取率も傾向が分かれるデータの1つだ。こぼれ球奪取とはクリア、ブロックなどフィフティーなボールを拾った数であり、後半の終盤にかけてその数値が増えている。終盤が近付くとともにセーフティーなクリアや体を張った守備が増えると言い換えれば分かりやすいかもしれない。後半終盤に限らずこぼれ球奪取率はビハインドチームが高い傾向にあり、結果ボール保持率にも影響していると言えるだろう。

ビハインドのチームはゴールを奪うという分かりやすい共通目標が生まれるが、リードをしているチームはその判断が揺らぎ、攻撃を意識していても守勢になってしまうケースは珍しくない。その証明が先に紹介したボール保持率の偏りにある。1点リードしているチームがそのままそれを結果に結び付けるにはどうしたら良いのか。最終結果毎に分けたデータを紹介しよう。

1点リード時における試合結果別のデータ(保持率とこぼれ球奪取率)

上図は1点リードをしているチームを対象に最終結果毎に分類したグラフだ。例えばボール保持率のグラフの最初の地点は、前半5分経過時に1点リードしているチームのうち、勝利で終わったチームは前半10-15分のボール保持率が49.8%、逆転負けとなったチームは44.6%、引き分けたチームは45.8%というデータが示されている。1点リードしたチームはボール保持率が下がるが、その中でも追い付かれたり逆転負けとなったチームはさらに低い傾向となった。こぼれ球奪取率も全体的には勝利チームが高い時間帯が多く、やはり相手にボールを保持され続けるのは良くないことを示している。

1点リード時における試合結果別のデータ(セットプレー切替時間)

一方でセットプレーを獲得した際の切替時間のデータは、勝利チームが短めになり、引き分け、逆転負けのチームは長い数値を記録している。つまり、時間を稼ぎ過ぎるのは良くないという傾向を示している。意外なデータだがこの傾向に影響を与えているチームの1つが近年のJ1で多くの勝利数を積み上げている横浜FMだ。2年前のスローインの分析記事『スローインからの攻撃とその評価を考察する』でも紹介しているが、横浜FMは現在もセットプレー獲得時の切替時間が早い傾向にあり、さらに点差状況を加味してもそれらが大きく変わらない特徴を持つ。ひたすらゴールを奪いに行く彼らだからこそのデータと言えるかもしれない。

上記を踏まえるとやはり1点リードの際、特に後半中盤までは点差0の意識で臨むのがベストだろう。もちろん、ボール保持についてはチームのスタイルに影響されるためので、下手にボールを持ち危険なロストを招くのは良くないが、相手にボールを保持され続けるのも問題がある。点差を意識し過ぎず、ゲームを支配し続けることが勝利には必要不可欠だ。


八反地勇

※最初の図を除き2020年から2022年7月18日時点のJ1,J2,J3のデータを使用

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