時間帯別のAPTと総移動距離
こういったレギュレーションの変更の影響を考慮して、以降のデータ集計は2020年以降をベースとした。では、点差はどのように動いていくのか。5分毎に点差を抽出して下図にまとめた。
時間経過と点差
点差・時間帯別の保持率と攻撃時間
点差・時間帯別のセットプレー切替時間
セットプレー切替時間は、セットプレーを獲得した際にどれだけ時間をかけているかというデータで、ボールアウトからスローインやコーナーキック、ゴールキック、被ファウルからフリーキックまでの時間などを計算したものだ。アウトプレーの時間内には多くの事象が起き得るため、1分以上かかっているものは計算外とした。このグラフは実に分かりやすい傾向が出ており、リードしているチームは時間をかけ、ビハインドチームは早くリスタートしている。交代枠の利用などアウトプレー中のアクションが増える後半はその差が顕著に表れており、リードチームとビハインドチームの差は約10秒も開いた。
点差・時間帯別のこぼれ球奪取データ
こぼれ球奪取の数や奪取率も傾向が分かれるデータの1つだ。こぼれ球奪取とはクリア、ブロックなどフィフティーなボールを拾った数であり、後半の終盤にかけてその数値が増えている。終盤が近付くとともにセーフティーなクリアや体を張った守備が増えると言い換えれば分かりやすいかもしれない。後半終盤に限らずこぼれ球奪取率はビハインドチームが高い傾向にあり、結果ボール保持率にも影響していると言えるだろう。
ビハインドのチームはゴールを奪うという分かりやすい共通目標が生まれるが、リードをしているチームはその判断が揺らぎ、攻撃を意識していても守勢になってしまうケースは珍しくない。その証明が先に紹介したボール保持率の偏りにある。1点リードしているチームがそのままそれを結果に結び付けるにはどうしたら良いのか。最終結果毎に分けたデータを紹介しよう。
1点リード時における試合結果別のデータ(保持率とこぼれ球奪取率)
上図は1点リードをしているチームを対象に最終結果毎に分類したグラフだ。例えばボール保持率のグラフの最初の地点は、前半5分経過時に1点リードしているチームのうち、勝利で終わったチームは前半10-15分のボール保持率が49.8%、逆転負けとなったチームは44.6%、引き分けたチームは45.8%というデータが示されている。1点リードしたチームはボール保持率が下がるが、その中でも追い付かれたり逆転負けとなったチームはさらに低い傾向となった。こぼれ球奪取率も全体的には勝利チームが高い時間帯が多く、やはり相手にボールを保持され続けるのは良くないことを示している。
1点リード時における試合結果別のデータ(セットプレー切替時間)
一方でセットプレーを獲得した際の切替時間のデータは、勝利チームが短めになり、引き分け、逆転負けのチームは長い数値を記録している。つまり、時間を稼ぎ過ぎるのは良くないという傾向を示している。意外なデータだがこの傾向に影響を与えているチームの1つが近年のJ1で多くの勝利数を積み上げている横浜FMだ。2年前のスローインの分析記事『スローインからの攻撃とその評価を考察する』でも紹介しているが、横浜FMは現在もセットプレー獲得時の切替時間が早い傾向にあり、さらに点差状況を加味してもそれらが大きく変わらない特徴を持つ。ひたすらゴールを奪いに行く彼らだからこそのデータと言えるかもしれない。
上記を踏まえるとやはり1点リードの際、特に後半中盤までは点差0の意識で臨むのがベストだろう。もちろん、ボール保持についてはチームのスタイルに影響されるためので、下手にボールを持ち危険なロストを招くのは良くないが、相手にボールを保持され続けるのも問題がある。点差を意識し過ぎず、ゲームを支配し続けることが勝利には必要不可欠だ。